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暴行罪誰にでもよく分かる罪名別ガイド

暴行罪

暴行罪

(刑法第208条で2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)

暴行罪の総論

不法な有形力の行使が暴行の定義です。被害者の体に触っていないと暴行にならないと思われがちですが、実際には被害者の体に触れなくても暴行になることがあります。また、一般的に暴行という言葉でイメージできるものよりは、刑法上の不法な有形力の行使は範囲が広くなっています。刑事事件の裁判例では塩を他人の顔や胸などに振りかける行為、通行人の数歩手前を狙って石を投げつける行為、狭い4畳半の室内で日本刀の抜き身を振り回す行為、相手の身辺で殊更に太鼓を連打する行為、耳元で拡声器を使い大声を発する行為などが暴行と認定されています。

けがをしておらず、衣服が破れるなどの証拠がない場合は、刑事事件としては被害者と被疑者との間で暴行をしたかどうかにつき水掛け論になることがあります。

もともと刑事事件の被疑者と被害者が知り合いの場合、何らかのトラブルがあって、本当にあったことがそのまま話されていないケースもありますので、捜査機関としてはより慎重に話を聞く傾向があります。

暴行罪の類型

職場でのトラブル/電車内でのトラブル/駅員に対する暴力/タクシーでのトラブル/酒席でのトラブル/DV/不倫のもつれによる暴力事件/機内暴力/教師による生徒への体罰

暴行罪の近年の傾向


平成21年度の警察庁の統計によると、
暴行事件の発生場所別認知件数は、
道路上が37.8%と最も多く、次いで住宅が15.6%、
サービス営業店12.0%、公共交通機関等9.4%、
駐車(輪)場6.6%、となっています。

暴行罪の量刑に影響を及ぼす事情

示談ができているか、暴行の態様が悪質かどうか、被害者に落ち度があるかなどです。

暴行罪の取り調べの例

暴行の態様が具体的に聞かれます。犯行に至る経緯や動機で被害者の落ち度も聞かれます。

酒に酔っている時の暴行では、刑事事件における責任能力を争われないように、日ごろの酒量、犯行当時の飲酒量(種類、量、時間、食事の有無など)、泥酔の程度を聞かれ、「酔ってはいましたが、記憶ははっきりとあります。」などという供述が取られ、弁解が封じられることがあります。

一般的に酒に酔っているからといって、刑事事件における責任能力に影響を与えるということにはなりません。酩酊の状態は単純酩酊と異常酩酊に分けられ、異常酩酊はさらに複雑酩酊と病的酩酊に分けられます。複雑酩酊は単純酩酊と質的差がなく、酩酊中は怒りやすく刺激的になり、興奮の程度が長く持続して乱暴な行動をするとのことです。病的酩酊は少ししかお酒を飲んでいない場合でも強い意識障害に陥り、激しい精神運動興奮とともに、不安、恐怖、激怒、凶暴性、幻覚、妄想などを覚え、攻撃的な行動をとるとのことです。単純酩酊は完全責任能力として、複雑酩酊は限定責任能力として、病的酩酊は責任無能力として扱われます。刑事事件の裁判例では、飲酒と睡眠薬の服用により、混合酩酊状態により限定責任能力状態にあったと認定されたケースがあります。

暴行罪の示談相場

暴行の程度によって異なりますが、示談額は数十万円程度の場合が多いように思われます。

弁護士による暴行罪の弁護方針

示談が重要です。

暴行の被害者と被疑者が事件現場で初めて会った場合は、否認事件では目撃者の確保が問題になります。被害者であれ被疑者であれ、重要な点で供述に不自然な点があれば供述の信用性が一気に揺らぎますので、弁護士としては関係者の供述内容の吟味が重要です。

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量刑と実際に起きた事件と判決・処分例

暴行罪とは

暴行行為を行って傷害に至らなかった場合に成立します。

※なお、暴行の故意で傷害の結果が生じた場合には、傷害の故意がなくても、傷害罪(刑法204条)が成立します。
※暴行の故意で傷害結果を発生させ、さらに人を死亡させた場合には、傷害致死罪(刑法205条)が成立します。

暴行の行為

暴行罪の「暴行」とは、人の身体に向けた有形力の行使をいいます。
典型的には殴る、蹴るなど(暴力)がこれに当たり、その範囲はかなり広く認められます。
被害者の身体に触れなくても暴行が成立したり、エネルギーによる暴行も認められる場合があります。

【暴行と認められた例】
  • 毛根を根本から切る行為(大判明治45.6.20)※髪の毛を切ったところで怪我をするわけではなく、いずれまた伸びて元にもどりますが、裁判所は暴行罪の成立を認めました。また、暴行にとどまらず傷害罪になる可能性も場合によってはありえます。
  • お清めと称して食塩を振りかける行為(福岡高判昭和46.10.11)
  • 人に対して農薬を散布する行為(東京高判昭和34.9.30)
  • 室内で日本刀を振り回す行為(最決昭和39.1.28)※接触がなくても、人の身体に対して現実的な危険を生じさせているため暴行となります。
  • 驚かすために人の数歩手前を狙って石を投げる行為(東京高判昭和25.6.10)
  • ブラスバンド用の太鼓を室内で連打して被害者を朦朧とさせた行為(最判昭和29.8.20)※最高裁が音による暴行を認めました。
【暴行となるか問題のある例】

他方、人に対する有形力の行使でもその正当性が認められれば違法性がないので暴行罪にはなりません。

  • ボクシングで相手を殴る行為※スポーツとして行われる場合はその行為は不当なものとはなりません。
  • 人に殴られそうになったためその人を突き飛ばした行為は暴行罪にならない可能性があります。※正当な防衛行為と認められれば、暴行罪になりません。
  • 人に殴られそうになったため、逃げようとしたら傍にいた人にぶつかってしまったような場合は、暴行罪にならない可能性があります。※緊急に避難しなければならない場合と認められれば、暴行罪にはなりません。
  • 労働争議権行使の際の暴行は、暴行罪にならない可能性があります。※正当な労働組合活動であれば暴行罪とならないとされています。
教師の生徒に対する体罰について

教師の懲戒行為については、学校教育法11条は「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を与えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」と規定されています。
しかし、これをもっていかなる有形力も加えることが許されないということはできず、相当性の認められる範囲内で許される場合があります。

【正当行為と認められた行為】
  • 訓戒のため教員が児童の顔を平手で2回位軽く上から押さえたにすぎない程度
  • 中学生に平手及び軽く握った右手拳で頭部を軽く叩くという程度

また、教師には児童生徒の安全を保護すべき義務があるのであって、この目的にでた児童生徒に対する有形力の行使は不法なものとはいえません。
例えば、中学校助教諭が教室から逃げ出した生徒を追跡し手を引っ張って連れ戻そうとしたのは、学校教師として、まさに、なすべき正当の業務によるものであって、暴行罪の違法性を欠き、これによって、生徒がヒステリー発作を起こしても、被告人を暴行罪や傷害罪とはできないとされました。

暴行罪の示談相場

暴行のみ(傷害の結果が発生していない)なので、治療費に関する被害弁償の問題は生じてきません。
そこで、示談交渉の内容としては精神的な面の慰謝料の支払いということになります。暴行の程度によって異なりますが、示談額は数万円から数十万円程度の場合が多いように思われます。

暴行罪の弁護方針

示談が重要です。
被害者と被疑者が事件現場で初めて会った場合は、否認事件では目撃者の確保が問題になります。被害者であれ被疑者であれ、重要な点で供述に不自然な点があれば供述の信用性が一気に揺らぎますので、関係者の供述内容の吟味が重要です。

実際にあった事件&ニュース

【背もたれ注意に立腹、機内で水かける 暴行容疑で男逮捕】
2012.7.1 産経新聞

離陸直後の旅客機内で座席の背もたれを戻すよう注意されたことに腹を立て、後ろの乗客にコップの水をかけたとして、沖縄県系豊見城署は30日、暴行の疑いで、石垣市大川、無職の男(44)を現行犯逮捕しました。逮捕容疑は午前9時10分ごろ、石垣発那覇行き日本トランスオーシャン航空70便のボーイング737機内で、背もたれを元に戻すよう注意した後部席の男性会社員(59)にコップの水をかけたとしています。離陸直後のため背もたれを倒さないよう案内していました。同署によると、容疑者は酒を飲んでおり、後ろの男性が背もたれを戻そうとすると「押すんじゃない」と言いながら壁をたたくなどしたといいます。

参考
第208条(暴行)

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

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