よくある質問まとめ

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刑事訴訟法Q&Aよくある質問まとめ

公判手続き

刑事裁判の流れはどのようになっていますか?
まず冒頭手続きです。
裁判長が被告人に対して氏名、年齢、職業、住所、本籍を確認します。次に検察官が起訴状の内容を読みます。これに対して、裁判官から黙秘権の告知がなされたのちに、被告人と弁護士に対して起訴状の内容に間違いがないかどうかの確認をします。
次に証拠調べです。
証人尋問や被告人質問もこの段階です。
さらに論告・求刑、弁論、結審です。
この段階で検察官から事件や量刑についての意見が述べられ、これに対して弁護士から意見を述べます。
最後に判決の宣告があります。
簡易公判手続きとはどのようなものですか?
被告人が罪を認める事件では、死刑または無期もしくは短期1年以上の自由刑にあたる事件を除き、裁判所は検察官、被告人、弁護人の意見を聞いて、簡易公判手続きに付すことができます。
簡易公判手続きの場合には、本来は採用できないまた聞きの証拠も事実認定に使えることになります。証拠調べの方法も、通常の裁判ほど厳格ではなく、公判期日において適当と認められる方法で足りることになります。
即決裁判とはどのようなものでしょうか?
事案が簡明で争いがなく、軽い罪が問題になる事件において、検察官が被疑者の同意を得て起訴と同時に即決裁判の申し立てをした場合に、裁判所がなるべく早い段階で裁判期日を開き、被告人が罪を認めた場合に、その日のうちに判決を言い渡す手続きです。即決裁判で懲役または禁錮刑の言い渡しをする場合には、執行猶予を付けることになっています。
略式手続きとはどのようなものでしょうか?
簡易裁判所管轄の事件において、被疑者が同意した場合に、正式裁判を開かず100万円以下の罰金刑が下される手続きです。
自分は被告人ですが、結果がどうなってもかまわないので、裁判に出なくても許されますか?
被告人の公判廷への出頭は、被告人の権利であると同時に、原則として被告人が出頭しなければ公判は開廷できない(286条)ことから、公判への出頭は被告人の義務でもあります。
例外的に、被告人が法人の場合(283条)、被告人が意思無能力者の場合(28条)、軽微事件の場合(284条、285条)は、被告人が出頭しなくても開廷できます。
被告人が途中で退廷することは許されますか?
被告人の公判廷への出頭は義務ですので勝手に退廷することは許されません(288条1項)。
被告人が許可を得ずに退廷しようとするときは、裁判長は在廷させるために相当な処分をすることができます。相当な処分として、在廷命令による制止のほか、被告人が暴力を振るい又は逃亡を企てた場合には、その身体を拘束することも可能です。
被告人が許可なく退廷した場合であっても、被告人が在廷していない限り審理の続行、判決することはできませんか?
被告人が許可なく退廷した場合には、被告人が在廷しないまま審理・判決することができます。被告人には在廷の権利がありますが、裁判長の制止命令にもかかわらず、発言を続け、やかましく騒いで審理を妨害するような場合には、法廷警察権の発動として退廷命令が発せられます。この場合に、被告人を法廷外に連れ出すための実力行使が行われますが、目的の範囲内であれば許されます。
弁護士をつけずに裁判をすることはできますか?
必要的弁護事件については弁護士をつけずに裁判をすることはできません。
被告人が私選弁護人を選任しない場合には、国選弁護人が付くこととなります。
必要的弁護制度とは、一定の重大事件につき、被告人の意思に関係なく、弁護人の立ち会いなしでの開廷・審理を禁じる制度をいいます。被告人の防御の利益を擁護するとともに、公判審理の適正を期し、ひいては刑罰権の公正な行使を確保するための制度です。
自分の事件を他人に見られたくないので傍聴人を入れないで欲しいのですが認められますか?
認められません。
公開裁判は憲法で規定されています(憲法37条1項)。
司法権は、死刑によって合法的に人の生命を奪うことまで認められている強力な権力です。そのような国家権力が適正に行使されるためには、国民が権力の行使を監視できるシステムが不可欠であり、裁判の公開が義務付けられています。
被告人は、手錠と腰縄につながれた姿を傍聴人に見られることになるので、公開を望まないでしょうが、個人のプライバシーは公開裁判の憲法上の要請の前には後退します。
公開裁判の要請があることから、被告人が傍聴人に姿をさらすこととなるのは仕方がないにしても、一般私人や報道関係者によって写真撮影や録音されることもあるのですか?テレビで映像が流されることもあるのでしょうか?
ありません。
現在は写真撮影や録音までは認められていません。
テレビに映される法廷の風景は当事者が入廷する前の場面ですし、裁判中の様子が絵を描いてしか伝えられないのもそのためです。
保釈されている場合に、実刑判決が出ると身体が拘束されるのはどのタイミングになるのでしょうか?
保釈されている被告人に対して実刑判決が出ると、判決が出た段階で身体拘束がされます。
ただし控訴審で保釈がなされているときは、実刑判決が維持された場合でもその場で身柄が拘束されずに後日に召喚される扱いになっています。
交通死亡事故で、逮捕も勾留もされずに裁判で判決日を迎えます。実刑判決が言い渡された場合に、すぐに身体拘束がなされるのでしょうか?
実刑判決が出されても、すぐに身体拘束がなされるわけではありません。判決確定まではそのままでいられますが、判決が確定すると召喚されます。
被害者参加制度とはどのような手続でしょうか?
平成19年に法律が改正され、平成20年12月1日から、「被害者参加制度」が施行され、殺人、自動車運転過失致死傷などの被害者やその遺族等(以下「被害者等」)から申出がなされ、裁判所が許可した場合には、被害者等は、「被害者参加人」として、刑事裁判の公判期日に出席できるようになりました。
「被害者参加人」は、被告人質問、情状に関する事項に関して証人尋問を行うことや、事実又は法律の適用についての意見を述べることもできるようになりました。
例えば、「被告人を懲役○年にしてもらいたい」といった量刑に関する意見を言うことも認められています。
すべての事件において被害者参加が可能でしょうか?
法律上、①故意の犯罪行為によって人を死傷させた罪、②強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、③業務上過失致死傷、自動車運転過失致死傷、逮捕及び監禁、未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐等、④上記②、③のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(例えば、強姦致死傷等)、⑤上記①ないし④の罪の未遂罪に限定されています(刑事訴訟法316条の33)。
被害者参加人は傍聴席に座るのでしょうか?
法廷内に座ることができます。
従来から、被害者等には、優先的に傍聴席が確保されるように配慮されていましたが、被害者参加人は傍聴席ではなく、法定内に座り、正に「事件の当事者」として出席することが可能になりました。
上記制度は実際に活用されていますか?
施行から1年経過した平成21年11月末までに参加の申出がなされた件数及び人員は、552件926名、そのうち参加が許可された件数及び人員は、522件850名です。
被害者参加人による公判期日への出席件数等の詳細については、
裁判の公判期日への出席が、410件657名
証人尋問が、80件105名
被告人質問が、266件329名
事実又は法律の適用に関する意見陳述が、226件282名
です。
性犯罪の被害者が、被告人と顔を合わせることも、傍聴人に姿を見られることも望まないような場合に、証言をすることは不可能でしょうか?
ビデオリンク方式によれば可能です。この方法によれば、法廷と別の場所でテレビモニターを通じて証言することになりますので、被告人とも傍聴人とも顔を合わせずに済みます。
他にも、性犯罪に関しては被害者による法廷での意見陳述権を認めるほか、告訴期間(従前6ヶ月以内)を撤廃するなど被害者の保護が考図られています。

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示談・情状弁護

示談をしたいのですが、被害者の連絡先はどのようにして教えてもらうことができますか?
被害者がもともと知り合いの場合以外は、通常、被害者の連絡先を知ることはできません。起訴猶予を狙う事件の場合、示談ができているかどうかは極めて大きな要因になります。そこで検察官を通して、弁護士に限って連絡先を教えてもらうようにお願いすることになります。検察官に対しても、示談が成立するように被害者を説得してもらうこともできます。
起訴前の段階で弁護士を依頼する大きな意味の1つは、本来ならば連絡手段のない被害者に対して連絡をして示談を締結することにあります。
示談をお願いして示談が奏功する可能性はどの程度でしょうか?
示談が成立するかどうかは事件の性質や示談金として用意できる金額、被害者の被害感情の強さなどの要因によって決まります。窃盗などの財産犯では示談の可能性は用意できる金額次第で比較的示談はまとまりやすいです。他方、身体犯や性犯罪のように損害が経済的価値だけで測定できないような犯罪は、被害者の被害感情によるところが大です。特に性犯罪で被害者が未成年の場合は親を相手に示談交渉する必要があり、親としては金銭の問題ではないという考え方が当然ながら強いために、示談が成立しにくいという実感です。
示談をするときに嘆願書を書いてもらうことがあると聞いたのですが、どのようなものでしょうか?
示談書のほかに、寛大な処分を要請する内容の嘆願書を被害者に書いてもらい、検察官や裁判所に提出することによって、情状面で考慮をしてもらうことがあります。被害者の処罰感情が重視される昨今、この嘆願書を取り付けることは重要なことです。
勤務先の売上金を横領してしまいましたが、後日弁償しました。弁済したにもかかわらず、何かにつけてそのことを持ち出されて脅されます。警察に突き出すとも言われていますが、刑事事件としてまた取り調べを受けることがあり得ますか?
民事事件と刑事事件は別ですから、民事的に賠償したとしても理論的には刑事事件として立件される可能性はあります。しかし示談が済んでいたり、賠償がされていたりすれば、仮に立件されたとしても逮捕されるかどうかや起訴されるかどうかにおいて有利な事情になります。
問題はこの種の事件において、実際に横領した額以上の金額を記入した書面に署名させられたり、実際にはやっていない横領行為までをもネタにして脅されたりすることが、決して珍しくないことです。このようなケースでは逆に強要罪の被害者になっていることもあります。
示談交渉の過程で被害者が言うことが二転三転しているのですが、注意すべきことはありますか?
被害者との示談で示談書などの書面を作成した後に、検察官から被害者に対して、確かに示談をしたかどうかの確認がされます。このときに被害者との意思疎通をあいまいなままにして示談書を作成してしまうと、後々に被害者の本意と異なるということになって問題になります。最終的に示談書を作成する段階で、被害者が明確に納得していることを確認する必要があります。
被害者が示談金を受け取ってくれない場合には、他に何か方法はありますか?
示談に応じるか否かはあくまで被害者の自由です。金銭で解決することを嫌う被害者や、そもそも加害者やその弁護人と接触すること自体を避ける被害者も少なくありません。
このような場合には、日本司法支援センター(法テラス)や弁護士会等への贖罪寄付や供託を行うことによって被告人の誠意を見せるということが考えられます。
深い反省を示し、被害者のいない犯罪の場合であれば、不正に得た利益を社会に還元する方法として、プラスの情状にできます。
もっとも検察官に対しては、一般的に効果があまりないとも言われています。
他方で贖罪寄付の有無によって刑罰が左右されるとすれば、被告人の資力の差により刑に軽重ができるのではないか、刑罰の公平感を損なうのではないかという問題にもなるため重視はされません。
情状とはどのようなことですか?
広く量刑の基礎となる事実をいい、犯罪事実に属するものと、属さないものに分けることができます。
※犯情事実
犯罪構成要件に該当する具体的事実にとどまらず、①犯行の動機あるいは誘因、②犯行の手段、方法、態様、③結果発生の有無、程度、態様、④共犯関係、⑤被害者側の行動又は事情、⑥事件の社会的背景あるいは社会に対する影響、⑦犯罪直後の被告人の言動などの事情など
※一般情状事実
①被告人の年齢、②学歴、その他生活史、③健康状態、④職業の有無及び地位・収入・資産、⑤前科前歴、⑥家庭その他の環境、⑦生活状況、⑧保護監督者の有無、⑨反省の有無及び被害弁償の努力、⑩示談の成功と被害者の宥恕、⑪贖罪の寄付、⑫社会事情の推移、⑬関連法規の変動、その他被告人に有利なあらゆる事情
情状弁護の活動としてはどのようなものがありますか?
被害者のいる犯罪であれば、示談の成立を目指すことが考えられます。
特に強制わいせつや強姦などの親告罪の場合には、示談成立によって被害者に告訴を取り下げさせることができれば不起訴処分が確実となります。
示談の際には、「示談書」、「嘆願書」(被害者が加害者に対し宥恕し、寛大な処分を望む旨の嘆願書)、「告訴取下げ書」「被害届取下げ書」などに記入してもらいます。これに、弁護人の意見書を付けて検察官に宛てて提出し、逮捕前であれば、「告訴しない旨の確認書」「被害届を提出しない旨の確認書」等を被害者に記入してもらい警察に宛てて提出します。
非親告罪の場合には、示談が成立したからといって不起訴処分や執行猶予判決となるとは限りませんが、情状としてはプラスに働きます。
職場の上司からの身元引受書や嘆願書を提出することは有効ですか?
有効です。身元引受書がたくさんの人間から提出されていることは、今回の事件を知った上でこれから監督してくれる人間がたくさんいるということです。日ごろ付き合いのある職場での人間関係が良好であるということにもなります。再犯可能性がないという方向で考慮されると思います。過去にも、勾留された家族のために親戚一同が嘆願書を書いて準抗告が認められたことがあります。
社会奉仕活動をすることはプラスの情状に働きますか?
反省の態度を示すことになりますので情状でプラスに働く可能性はあります。
ただし、社会奉仕活動をしたか否かで決定的な違いが表れるという程ではないでしょう。
臓器提供意思表示カードを情状として提出することを希望する被告人もいますが、どのような経緯でドナー登録をしようと思うに至ったかについてしっかりとした説明ができないと、付け焼刃のアリバイ作りとみなされるリスクもあります。
否認または黙秘した場合に量刑上不利に扱われることはありますか?
被告人の否認を量刑上ある程度考慮することは許されますが、これを重視して刑を重くするのは報復的な量刑の印象を与えるので好ましくありません。
黙秘権の行使については、否認の場合と同様に、有罪であると明らかに認められる場合にあえて黙秘をした動機やその背景にある被告人の人柄とか考え方に重点を置くべきであり、他の事情と総合して、反省していないと言える場合にその意味で量刑事情となるにすぎません。
暴力団員であるということは不利な情状となりますか?
不利な情状となることがあります。
被告人が暴力団員であるということは、一般にその生活態度・生活状況が芳しくなく、薬物や銃器等への近接性が高いとされ再犯のおそれがあるという点で、特別予防の観点から、被告人に不利な情状となります。しかし、例えば、暴力団員であることが何ら関係しないような事件に関しては、これを悪い情状として主張するのは適当ではないと考えられています。

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証 拠

私は無罪なのですが裁判で無罪を証明しなければならないのでしょうか?
刑事事件の被疑者や被告人が自分の無罪を積極的に証明する必要はありません。
有罪判決が確定するまで、刑事事件の被疑者や被告人は無罪の者として扱われます。そして、自分が無罪であることを被告人が証明する責任はなく、被告人が有罪であることを検察官が証明しなければいけません。「疑わしきは被告人の利益に」という大原則は、国家が刑罰権の存在を主張して刑事事件の被告人の人権の制限を求めている以上、当然の前提です。よって検察官が被告人は有罪であることを証明できなかった時には、被告人は無罪です。刑事事件の被告人が自分は無罪であることを証明して初めて無罪になるわけではありません
この考え方は、特に黙秘権を行使するかどうかにおいて重要です。有罪立証は検察官の責任においてすることで、刑事事件の被疑者である自分がそれに協力する必要はないと思えば、黙秘権を行使する意味が理解できます。冤罪事件において捜査官に自白を強要される毎日を送らざるを得ない場合に、自信を持って黙秘を続ける裏付けになりうる原則です。黙秘をすることが何か悪いことであるかのような誤解は、まじめな方に限って持っているようです。自白がないと起訴が難しい刑事事件において堂々と黙秘をすることは、自分の無罪を信じる以上、場合によっては有効な作戦です。
自白だけで有罪になりますか?
犯罪を構成する基本的事実、つまり誰かしらの犯人によって罪が犯されたということについて、自白しか証拠がない場合には有罪にできません。
刑事事件において自白は往々にして、強制や拷問、脅迫その他不当な干渉による恐怖と不安の下に、本人の真意と自由意思に反してなされる場合があるからです。自白は第三者の供述よりも過大評価される危険があるので、自白の偏重を避けることによって誤った判決を防止する必要があることも理由です。
ただし、故意があったかなかったか、被告人と犯人が同一人物であることについては、自白以外の証拠を常に要求すると事案によっては無理を強いることになるので、自白だけで有罪判定の証拠にできます。
検察官が、自白をすれば起訴猶予にするという約束をしたので自白しましたが、起訴されてしまいました。自白は有効ですか?
無効です。任意にされたものでない疑いのある自白は、証拠にできません。裁判例でも、検察官の不起訴処分にするという約束に基づく自白には任意性がないとされています。
本当は自白していないのに、共犯者が自白したと刑事に嘘をつかれたため自白しました。自白は有効ですか?
無効です。任意にされたものでない疑いのある自白は、証拠にできません。裁判例でも共犯者が自白したという虚偽の情報を与えて自白させ、その自白を示して共犯者にも自白させた事例で、自白の任意性が否定されました。
ちなみに共犯者は犯罪事実に関することについて被疑者をかばっても、犯罪事実の前後の状況についてはよくしゃべるといわれています。刑事は共犯者からこのような犯罪事実の前後の状況についての情報を被疑者に対してぶつけることによって、被疑者に「そこまでばれているのであれば犯罪事実に関してはさらに詳しく刑事が了解済みなのではないか」という不安を抱かせて自白をさせるようです。
手錠をかけられたままの取り調べで得られた自白は証拠として有効ですか?
無効です。自白が、任意にされたものでない疑いのある場合には、証拠にできません。裁判例でも、被疑者に手錠をかけたまま取り調べがされた結果得られた自白は任意性に欠けるとされています。
指紋が犯行現場から出ていないにもかかわらず出たと言われたので自白をしました。自白は有効ですか?
無効です。任意にされたものでない疑いのある自白は、証拠にできません。裁判例でも鑑定結果に対する虚偽の情報を伝えて自白させた事案について自白の任意性が否定されました。
警察官の苛烈な取調べに加えて、現場に遺留されたデッキシューズにつき、「今の発達した科学では、人間の分泌物から、その細かく枝分かれした血液型を知ることができ、指紋と同様、同じ分泌物の人間は、1億人に一人しかいないが、その分泌物がおまえのと一致した」等のあざとい許されざる虚言を述べて自白を引き出したもので、その影響下になされた被告人の自白はすべて任意性を肯定できないとした裁判例があります。
孤立させるために代用監獄を用いたり、捜査官から看守を選任したり等、捜査と留置が区別されていないような取調べ方法によって得た自白は証拠として有効ですか?
証拠能力が否定される場合があります。
本来であれば、勾留を執行する検察官が所属する法務省の管轄の拘置所に身柄を移すべきなのですが、実際には警察の留置場が代替施設をして利用されています。その場合でも、捜査と留置を切り離し、留置は中立の立場であるべきです。連続殺人事件について、自白を得るため、代用監獄として寂しい警察署を選び、孤立させ、しかも、捜査員から看守者を選任して被告人の留置業務に当たらせ、被告人の留置場内での言動を逐一捜査上の資料とした等の事実に加えて、連日長期間の厳しい取調べが行われたこと等により、任意性に疑いありとした例があります。
ただし、代用監獄が用いられること自体は現状では通常のこととされており、代用監獄であることのみで自白が証拠能力を失うことはありません。
警察官によって連日にわたる執拗な暴行脅迫によって得られた自白は証拠として有効ですか?
無効です。警察官によって、身体を壁にぶつけられる、後頭部をたたく、壁に向かって長時間座らせる等により仕方なくなされたような自白は任意性が否定され、このような方法で得られた供述調書は証拠能力が否定されます。
他にも、警察官から数日間にわたり、「こじき」などと罵倒されたうえ、頭部、両肩等の殴打、胸倉をつかんでの足払い、足蹴り、腕をねじあげる、顔面を靴で踏む、首を絞める等の暴行を受け、その結果入れ歯を折られる等した場合に作成された自白調書についても自白の任意性を欠き証拠能力が否定されています。
警察官によって、暴行脅迫を加えられたり、弁護人を依頼したいと言ったにも拘わらず無視して取調べが行われるといった、違法な取調べによって自白が得られました。この警察官による調書に証拠能力が認められないことは問題ないとしても、そのまま恐怖心が続いた状態で検察官の取調べでも自白してしまったり、引き続き弁護士と会うことができないまま検察官の取調べでも自白してしまったりした場合に、検察官の調書について証拠として有効ですか?
警察官の違法な取調べによって、抑圧された心理状態の継続下に行われた検察官の取調べにおける調書についても証拠能力が否定される場合があります。
■逮捕状執行前に任意で取調べ中の被疑者に対し、弁護人選任手続及び必要な協議をなすべく訪ねた弁護人との接見を拒否した事案について、憲法34条、刑事訴訟法30条の保障する弁護人依頼権を侵害したとして、被告人の員面調書について証拠能力を有しないとしました。なお、警察での強制的取調べによる心理的影響から脱しきれないままの状況で検察官の取調べがなされたものであるとして、検察官面前調書の一部についてもその任意性も否定しました。
■ 軽微な無銭飲食によって逮捕勾留し、その期間のほとんどを強盗強姦・強盗殺人事件の取調べに流用した結果被告人の自白を得た事案について、不当な見込み捜査、違法な別件逮捕に当たるとして警察官に対する自白調書の任意性を否定したうえ、検察官に対する自白調書と裁判官に対する勾留質問調書の信用性も否定しました。
警察官に無理矢理ポケットに手を突っ込まれて覚せい剤を取り出され逮捕されました。どのような方法で収集された証拠であっても、覚せい剤という法禁物が出たからには証拠能力は認められるのでしょうか?
違法収集証拠として証拠能力が否定される場合があります。
さらに、違法収集証拠から派生して得た証拠についても毒樹の果実として証拠能力が否定される場合があります。
ただし、当該証拠の証拠能力が否定されたからといって必ずしも有罪にならないということとは異なります。他の証拠から有罪立証がされる場合も十分にあります。
【証拠能力を否定した事案】
■ 職務質問に伴う所持品検査により発見された覚せい剤について、所持品検査の必要性も緊急性もないのに、被告人の着衣のポケットにいきなり手を突っ込んで、ポケットの中から覚せい剤を取り出した場合について、証拠能力を否定しました。
■ 深夜、数名の警察官により物理的強制力を加えられてパトカーに乗車させられ、30分近くかけて警察庁舎に連行された後に作成された被告人の尿の任意提出書、鑑定承諾書、鑑定嘱託書、尿の鑑定書、腕部の写真撮影報告書について、証拠能力を否定しました。
■ ホテル客室内での職務質問中、被告人が暴れながら床面や壁に頭部等を打ちつけたことから、警職法3条の名目でその場で手錠をかけて警察署に連行したことは、事実上の逮捕であって違法であるとして、その過程で差し押さえられた疑いのある注射器について、違法収集証拠として証拠能力を否定しました。
■ 風営法違反事件において、警察官が客の供述調書の一部又は全部をねつ造して逮捕状及び捜索差押許可状を得て執行した際に撮影された写真は違法収集証拠であるとして、その証拠能力を否定しました。
■ 警察官が約3時間30分という異例といえる長時間の職務質問の後に、鉄柵にしがみつく被告人の手指を引き離しパトカーに引き入れて警察署に連行し、4名以上の警察官が在室するなかで1時間余り抵抗する被告人に対し、無令状で腕の注射痕の検分や写真撮影を行い、これらの資料をもとに強制採尿令状を得て被告人に示し、尿の任意提出に応じない場合には同令状を執行すると告知した結果尿を提出したという経緯により得られた尿の鑑定書の証拠能力を否定しました。
■ 警察署への任意同行後、尿の任意提出を求められた被告人が、これを拒否し旅の途中なので帰らせてほしい旨強く要求したにもかかわらず「小便を出したら帰す」と答えて容易に帰そうとせず、約4時間を経過して尿意を告げた被告人にポリ容器に排尿するよう求めて尿を採取した事案について、尿の鑑定書の証拠能力を否定しました。
■ 任意同行を拒否した被告人を、警察官数名が腕などを掴み捜査用自動車に押し込んで警察署に同行させ、尿の任意提出を求めるとともに強制採尿令状の発付を受けるまで約6時間にわたって警察署内に留め置き、強制採尿を実施しようとした直前にやむなく排尿した被告人の尿を採取した事案について、令状に基づかないで身柄を拘束した違法があるほか、その間弁護士に連絡してもらいたいという被告人の申出を実行しなかった弁護人選任権の行使を阻害した等の違法があって、こうした身柄拘束を利用して行われたと見ざるを得ない違法があり、この尿の鑑定書の証拠能力を否定しました。
黙秘権について知らされないまま取調べが行われました。この取調べで得た自白は証拠として有効でしょうか?
違法な手続下における自白は証拠能力が否定されます。
■ 産褥期にあった被告人の健康状態を配慮せず、黙秘権、弁護人選任権についても不十分な告知しかしないまま、追及的に、その弁解を全く聞き入れないような態度で長時間にわたり取調べ、自白した後も法律上不可能な再度の執行の可能性を示唆して自白を撤回させないようにするなど不当な言動に出たもので、全体として任意性に疑いがあるとしました。
■ ウルドゥー語しか理解できないパキスタン人の被疑者に対する取調べの際に、黙秘権、弁護人選任権等の告知を日本語の能力が十分でない通訳人を介して簡単かつ形式的に行うにとどまったため、その意味を理解できなかったこと、取調べに耐え得る健康状態でなかった疑いがあるのに何ら配慮を加えなかったこと、自白すれば自国へ送還してもらえると誤信しているのに乗じたこと等取調べの方法にも不当な点があったとして自白の任意性を否定しました。なお、本件は、放火の疑いがなければ通常立件されることのない軽微な不法残留の事実で逮捕したものであり、問題のある別件逮捕であるという観点からもその証拠能力を否定しています。
弁護人を選任できる権利について知らされないまま取調べが行われました。この取調べで得た自白は証拠として有効でしょうか?
違法な手続下における自白は証拠能力が否定されます。
■ 逮捕後の取調べに当たり、警察官が被疑者の弁護人選任の申出を弁護人に通知することを怠った違法があり、かつ供述調書は被告人の自白を得ることを唯一の目的とする身体拘束の下に作成されたものであって、その取調べの過程において被告人が不当に心理的な影響を受けるおそれのあったことが十分に推察されるとして、警察官に対する供述調書の任意性を否定しました。
逮捕直後の取調べの際に、弁護人を呼んでほしいと頼んだにもかかわらず、裁判になるまで呼べないと断られ、仕方なく取調べに応じ自白しました。この取調べで得た自白は証拠として有効でしょうか?
違法な手続下における自白は証拠能力が否定されます。
■ 殺意を否認している被告人が、気管支系統が悪く体も元気がなかったので、「弁護士さんを入れてもらえんでしょうか」と言ったところ、警察官は「そら裁判には弁護士はつきものやから君が選任する権利を持っているからかめへんけど、まだそんな段階やないから、たとい弁護士を入れても職権でもって弁護士と君の面会をさせへん」と机をたたいて言われ、当時接見禁止になっていたためそんなものかとあきらめた事案につき、弁護人選任の権利は被疑者の防御権の重要な部分をなすものであるから、その取調べはその手続において重要な瑕疵が存するというべきであり、捜査官に対する各供述調書は事実認定の証拠となし得ないとしました。
現行犯逮捕の要件がないのに、逮捕され、取調べにおいて調書が作成されました。この取調べで得た自白は証拠として有効でしょうか?
現行犯逮捕の要件がないのに逮捕された場合、違法な身体拘束となります。違法な手続の下でなされた自白は証拠能力が否定されます。
■ 裁判例では、現行犯逮捕の要件がないのに、公然わいせつの現行犯として被告人を逮捕しその身柄拘束中に調書が作成された場合、違法に収集された証拠であるとして証拠能力を否定しました。
あまりに長く拘束されていたので、自暴自棄になり自白してしまいました。この自白は証拠として有効でしょうか?
憲法38条2項は、不当に長く抑留・拘禁された後の自白は、これを証拠とできない旨規定しています。
■ 単純な窃盗事件につき、罪証隠滅、逃亡のおそれもないのに控訴審の第1回公判期日に至るまで109日にわたり拘禁し、当該公判廷で初めて自白した事案について、不当に長い拘禁後の自白として、これを有罪の証拠とした原判決は憲法38条2項に違反するものとしました。
何が押収されているか知る方法はありますか?
押収品目録を手に入れればわかります。
被疑者や関係者から証拠品が押収される際に、立会人に押収品目録が交付されます。
被疑者自身から押収されれば被疑者に交付されますが、逮捕後被疑者の身柄が拘束されている間に自宅が捜索・差押えされるケースなどでは、同居人や親族、管理人などに交付されます。
ただし、押収品目録の記載は、「ダンボール一式」「書類一式」などと概括的に記載されることが多く、具体的にどのような物が押収されているかまでは不明な場合もあります。
検察官が証拠調べ請求した証拠を見ましたが、記憶しているよりも少ない数の調書しか出てきませんでした。自分の不利になるような発言を取り上げた調書ばかり採用されているように思うのですが、この点で争う方法はありませんか?
検察官は全ての証拠を出してきているとは限りません。
検察官の手持ち証拠の中で自分にとって有利になりそうなものがあるのであれば、開示を求めることも必要です。
公判前整理手続きに付されていれば、検察官手持ち証拠の開示請求を行うことが出来ます。
公判前整理手続きに付されていない場合でも、同様の請求をすることで検察官に任意開示してもらえるようお願いすることは可能です。
検察官が任意の開示に応じない場合には、裁判所に対して、検察官に開示させるようにと訴訟指揮を促すことが可能です。
検察官が証拠請求してきた証拠は、自分に不利となる調書ばかりでした。また、被害者についての調書も事実に反するものばかりでした。このような調書を裁判官の目に触れさせないことはできますか?
証拠について不同意とすれば裁判官の目には触れません。
証拠ひとつひとつに対して同意、不同意の選択ができるのはもちろんのこと、調書の一部分について不同意とすることも可能です。
被害者や関係者の調書について不同意とした場合は、被告人の言い分のみで裁判を進行させることができるのですか?
通常、調書を不同意とした場合には証人尋問の請求がなされます。
調書のような伝聞証拠の場合には、被告人に反対尋問の機会が確保されていないので、同意・不同意の判断をすることとなります。調書の内容が事実と異なる場合には、被告人の反対尋問の権利を行使するため、被害者や関係者を法廷に呼んで証人尋問という方法をとることとなります。
検察官、被告人側、双方の証拠調べ請求をしたもの以外は証拠となり得ませんか?
裁判所は、必要と認めるときには、職権で証拠調べをすることができます。
DNA鑑定の結果を証拠として用いることは許されますか?
①その科学的原理が理論的正確性を有していること、②専門的技術を習得した者により、科学的に信頼される方法で行われたと認められることの2つの要件を満たせば証拠として用いることができます。
ただし、DNA鑑定の結果を有効な証拠として用いることと、それのみで有罪と出来るか否かは別の問題となります。
DNA鑑定は、従来の血液型鑑定と比べると絞り込みの制度は飛躍的に高まったとはいえ、あくまでも統計学的な数字にすぎません。また、DNA鑑定のプロセスが、必ずしも鮮明に裁判官及び国民の目に見えるものではなく、科学的技術の進歩により、現在の結果が覆される危険性が全くないとは言えないこと等から、証拠能力は認められても、その証明力についてはなお慎重な判断が必要とされています。
警察犬による臭気選別の結果(臭気選別結果報告書)を有効な証拠として用いることは許されますか?
①選別につき専門的な知識と経験を有する指導手が、②臭気選別能力が優れ、選別時において体調等も良好でその能力がよく保持されている警察犬を使用して実施したものであるとともに、③臭気の採取、保管の過程に不適切なところが認められず、④臭気選別の方法に不適切な点のないことが認められる場合には、臭気選別結果報告書に証拠能力が認められます。
ただし、証拠能力が認められたとしても、臭気選別結果報告書のみで犯人との同一性を認め、有罪の決め手とすることは無いでしょう。
他の間接事実とともに総合して同一性を認める場合の一つの間接事実という位置づけになるにすぎません。

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求刑・量刑

求刑とは何ですか?
裁判において検察官が刑の種類や量について意見を陳述することです。

刑事事件の犯人の改善、更生、社会秩序の維持にいかなる刑罰が効果的であるかによって決まります。無期以上の求刑をするには高等検察庁の決裁が必要とのことです。
求刑は検察官の意見に過ぎず、裁判所を拘束しないので、求刑よりも重い刑を言い渡しても問題はありません。もっとも、大部分のケースで求刑は宣告刑の上限基準になっています。裁判官が言い渡す刑は機械的に求刑に8割をかけたものと信じていた被疑者がいましたが、量刑判断は精密に行われていますので、留置場に流布している噂にしかすぎません。もっとも統計的にみて裁判官が言い渡す刑が結果的に、求刑よりも約2割低いラインに集中しているという指摘は、大きく間違ってはいません。
検察官が求刑で3年を上回る刑を求めてきた場合は、実刑を求めているといわれます。実際に下った判決が求刑の半分以下になると、検察庁が控訴を検討する基準になるといわれます。実務上、刑期を求刑の半分より少し長くする代わりに未決拘留日数を多めに参入することも行われているようです。
なお言い渡される刑の月単位に関して奇数月はまれで、最小で2月刻みに刑期を増減する判決が通例です。
検察官の求刑は絶対的なものですか?
求刑は検察官の意見に過ぎず、裁判所に対して法的な拘束力をもつわけではありません。
しかし、検察官の求刑が極めて重要な役割を果たしていることも事実で、実際には、実刑の宣告刑は求刑の2割ないし3割程度低いところに集中しています。他方、執行猶予の場合には、求刑どおりとすることが多いです。
検察官の求刑以上の判決を下すことはできますか?
できます。
求刑は検察官の意見に過ぎないので、裁判所を拘束しません。裁判所が妥当と思う量刑が検察官の求刑以上であれば、そのように判決を下すことができます。
実際にも、裁判員裁判で求刑以上の判決が出されていることがあります。
前科・前歴があると量刑に影響はありますか?
特に同種前科・前歴がある場合には、一般に反省の情が見られず、再犯のおそれが大きいといえることから、刑を加重する情状となります。
例えば、覚せい剤の自己使用の場合、初犯であれば概ね執行猶予が付きますが、2回目にはほとんどが実刑となり、さらにその前科を重ねるに従い、刑期が長くなる傾向にあります。

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裁判の流れのまとめ

刑事裁判は一般の方にとってなじみのないものでしょう。ある日突然、刑事事件に巻き込まれ刑事裁判にかけられた場合に、刑事裁判についての知識が全くないと不安は募る一方です。

そこで、以下に刑事裁判で知っておくべき基礎知識について説明しましょう。

1.刑事裁判の開始は起訴

刑事裁判は、検察官が裁判所に対して被告人を処罰するように求めることによって始まります。これを起訴というのですが、起訴は検察官だけができることです。弁護士が起訴ができるかのように誤解している方がいるようですが、弁護士が裁判にかけることができるのは民事裁判だけで、刑事裁判は弁護士がイニシアチブをとって始められるわけではありません。

検察官は裁判所に起訴状を提出します。起訴状には、被告人を特定できる事項と、公訴事実、罪名を記載します。起訴状の中身には刑事裁判において予断を抱かせるものは添付してはいけません。これが起訴状一本主義です。起訴状一本主義は裁判所があらかじめ被告人に対して何らかの予断を抱くことを排除するためのもので、刑事裁判の公正が目的です。

起訴されると、裁判所は遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達。検察官・弁護士は事前に、お互いに対して刑事裁判に提出する予定の証拠を見せ合います。検察官・弁護士が証拠提出を予定しているものについて裁判所は、刑事裁判で証拠として採用してよいかどうかの意見を求めるので、刑事裁判の前に検察官・弁護士の方でお互いに相手に見せて内容を確認するのです。

2.刑事裁判の流れ

刑事裁判では最初に、冒頭手続が行われます。裁判長はまず出頭した被告人が人違いでないかどうかを確認。これを人定質問といいます。被告人に氏名や年齢、職業、住居、本籍を確認し、起訴状に記載された被告人と同一人物かどうかを確認。次に検察官が起訴状を朗読します。そして何を検察官が刑事裁判の審理の対象としているのかを明らかにします。被告人にとっては何罪のどの範囲で防御をすればよいのかを明らかにしてもらい、これから始まる刑事裁判において反論の機会を与えられるという意味で重要なものです。裁判長は被告人に対し黙秘権の説明をします。ずっとだまっていることも1つ1つの質問に対して答えないこともいずれもできるのですが、質問に答えた場合には刑事裁判において被告人にとって有利にも不利にもなることについて説明がなされます。このような黙秘権についての説明をした後に、裁判長は被告人及び弁護士に対し、刑事裁判の公訴事実に間違いがないかどうかを確認します。

刑事裁判の冒頭陳述に続いて行われる証拠調べではまず、検察官が冒頭陳述を、検察官は証拠を用いて証明する事件を説明。刑事裁判の証拠調べは、証人に証言をしてもらい、証拠としての書類や物を調査。順番としては最初に検察官の提出する証拠を、次に弁護士の提出する証拠を調査、弁護士の証拠の調査が済んだあと、証拠調べの最後には被告人質問があり、被告人に一問一答の形で事実関係や情状など、弁護士と検察官がそれぞれ質問。刑事裁判の証人尋問では、まず証人尋問を要求した側(検察官か弁護士)が尋問。これを主尋問といいます。検察官か弁護士が行う主尋問では、証人の記憶がはっきりしない場合などを除いて誘導尋問を禁止。主尋問の後に、その証人尋問を要求しなかった側(検察官か弁護士)から反対尋問が行われます。反対尋問では誘導尋問が許されます。続いて検察官は、論告を行います。ここでは被告人の犯罪行為に対する法的評価を述べます。同時に、どの程度の刑罰が被告人にはふさわしいかの意見も述べます(求刑意見)。検察官の論告に続いて弁護士も弁論を述べます。弁論の次に、被告人には最終陳述の機会が与えられ、何か言いたいことがあれば最後に表明する機会が与えられます。

ここで証拠調べ手続は終了して刑事裁判は結審となり、判決の宣告となります。

刑事裁判第1回公判期日の流れ
  • 被告人の氏名、本籍、住所、年齢、職業をきく人定質問
  • 検察官が起訴状を朗読
  • 裁判官が被告人に黙秘権の告知、起訴状の公訴事実に対する被告人の意見(罪状認否)(「その通り間違いありません」、「事実と異なります」と指摘)、弁護士の意見
  • 検察官が冒頭陳述と証拠請求
    冒頭陳述は、立証予定の事実で、通常は、被告人の身上・経歴、本件犯行に至る経緯、犯行の状況等、情状を述べる
    弁護士が同意・不同意の意見
    弁護士が同意した証拠は検察官が要旨を述べる
    不同意の場合、検察官が証人尋問の請求の可能性
  • 弁護士の立証
    自白事件では弁護士が量刑上有利な証拠を請求
    同意した証拠は弁護士が要旨を述べる
    弁護士は家族などの情状証人の尋問と被告人質問を請求
    否認事件では争点に関する証人請求などを弁護士が述べる
  • 検察官の論告・求刑
    検察官の主張、量刑意見
  • 弁護士の弁論
    弁護士の主張、弁護士の意見
  • 被告人の意見陳述
  • 弁論終結(結審)
    自白事件では第1回公判期日でここまで
  • 判決宣告

3.刑事裁判における証明

刑事裁判はあくまでも起訴状に書かれた事件について、被告人が有罪かどうかを判断し、有罪であればどのような刑罰を科すかを決めるものです。刑事裁判では、検察官が主張する犯罪事実の存否に関する事実認定が非常に重要です。刑事裁判における事実認定は過去に発生したと検察官が主張する事実が本当にあったかどうかを判断するものです。裁判官は、公訴事実の存否を直接見聞きしているわけではないので、証拠や、証人や被告人の話によって判断。裁判官が判断の材料にできる証拠には制限があり、「疑わしきは被告人の利益に」の原則が存在します。証拠による立証は「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」でなければなりません。

4.刑事裁判での挙証責任

刑事裁判において証明の必要がある事実があったかなかったかいずれとも判断できなかった場合は、事実は証明されなかったことになります。刑事裁判では、犯罪事実については検察官に挙証責任があります。刑罰を科すと主張する国家が犯罪事実を立証する責任があり、被告人の方に積極的に無罪を立証すべき責任を負うわけではないのです。刑事裁判では「疑わしきは被告人の利益に」で、無罪の推定が働いているのです。

5.刑事裁判における証拠

刑事裁判の証拠には甲第○号証、乙第○号証、弁第○号証などと番号が付けられます。検察官が刑事裁判において提出する証拠には、被害者の供述調書や犯行現場の実況見分調書、鑑定書などの甲号証と、被告人の供述調書や前科調書等の乙号証に分けて番号が付けられます。刑事裁判においては被告人の供述調書や前科調書等以外の証拠である甲号証から先に取り調べることに。弁護士が刑事裁判において提出する証拠には弁第1号証、弁第2号証と番号が付けられます。

6.刑事裁判における供述録取書

刑事裁判では供述録取書が非常に重要です。検察官が被害者や目撃者などから事情聴取した供述を記録した書面(検察官面前調書)を略して検面調書といいます。調書作成の際には、供述者自身に調書の内容を確認してもらい、内容に間違いがないとき検面調書に署名・押印。警察官が事情聴取した供述を記録した書面(司法警察員面前調書)を略して員面調書といいます。警察の捜査は、捜査の初期段階で事件の全貌が明らかになっていない段階から始まるので、員面調書では事件関係者の供述が総花的に記録されます。これに対し検察官は、警察から送られた資料を検討して核心部分に絞って捜査するので、検面調書は要点をついた内容になります。被疑者以外の人の供述内容を記録した検面調書は、員面調書よりも、刑事裁判の証拠として利用価値が高いともいわれます。

7.刑事裁判における自白の取り扱い

刑事裁判において自白とは、自分の犯罪事実を認める被告人自身の供述です。不利益なことに関する供述は信用できると考えられるので自白は「証拠の女王」と呼ばれ、かつて強制・拷問などによって自白を得ることが行われたことがありました。そこで刑事裁判においては任意性に疑いのある自白は排除するという原則が定められています。任意性のない自白は、証拠能力が認められません。

8.刑事裁判での被害者

刑事裁判ではたとえば性犯罪の被害者について、被害者の住所・氏名などを裁判で明らかにしないとか、証言の際に被告人や傍聴人から姿が見えないように遮へいをするなどの配慮がなされることがあります。

被害者は刑事裁判の第1回公判期日後には、正当な理由がないなどの例外的な場合を除いて、刑事事件の記録刑事裁判の調書を閲覧したりコピーが可能です。被害者が刑事裁判の傍聴を希望すれば、裁判所が配慮をすることになっており、通常は刑事裁判の傍聴が可能。希望すれば刑事裁判において被害に関する心情などについて意見を述べることもできます。

故意の犯罪行為によって人を死傷させた犯罪や性犯罪などの一定の犯罪の被害者には、裁判所の許可を得て、刑事裁判に被害者の参加が可能です。刑事裁判に出席して検察官の隣に座って情状証人や被告人に質問をし、意見を述べます。弁護士に委任することもでき、一定の場合には国選被害者参加弁護士の選任も請求可能です。刑事裁判で有罪判決が出た場合には損害賠償命令を申し立てることもできます。刑事裁判が終わった後は、検察庁から裁判の結果や出所予定、釈放の通知も受けることに。

9.刑事裁判における判決の言い渡し

刑事裁判では、被告人を在廷させて判決を言い渡します。刑事裁判の判決は通常、まず主文から。有罪の場合、懲役刑なら「被告人を懲役○年に処する。未決勾留日数中○日を右刑に算入する」という主文になります。懲役刑では通常、未決勾留日数(判決までに身柄拘束されていた期間)から刑事裁判に最低限必要な日数を引いた日数を、刑期から差し引きます。執行猶予の場合にはこの後に、「この判決が確定した目から○年間右刑の執行を猶予する」とくだりが続くのです。

無罪判決の場合は、主文は「被告人は無罪」となります。

裁判官が「主文は後回しにして、理由から述べます」と言って判決が主文からでなく理由から始まる場合は、死刑判決の時などです。死刑判決の時に結論をいきなり言い渡されると、被告人がまともに判決理由を聞く心理状態にならないことから、裁判官が被告人に判決理由をよく聞かせたいという趣旨です。

刑事裁判における判決が出てからの流れ
  • 無罪判決の場合、刑事裁判の判決後にすぐに身柄拘束は効力を失い釈放され、身柄拘束に対する刑事補償を請求可能。
  • 罰金刑の場合、検察庁で罰金を納付。
  • 執行猶予の場合、身柄拘束中でも当然、釈放。
  • 実刑判決の場合、保釈中でも保釈は取り消され、身柄が拘束され、実刑判決が確定すると、刑務所に行くことに。控訴して再保釈の請求が可能ですが、一般的には保釈はされにくくなります。保釈金も追加して積むのが通常です。
  • 死刑判決の場合、確定後は拘置所で執行を待つことになります。

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