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マスコミ報道について逮捕阻止 5つのポイント

マスコミ報道について

マスコミ報道の仕組み

マスコミによる報道の仕組みはどのようになっているのでしょうか?

マスコミ報道の流れはおおむね以下の通りです。
事件発生

警察の広報担当が記者クラブ加盟各社にFAX
(重要事件は「レク」と呼ばれる記者会見)

マスコミ各社が掲載についての判断

マスコミ各社が追加事実を警察の広報に取材(重要事件は夜討ち朝駆け)

掲載

警察が記者クラブに発表することを許されている根拠については、国家公安委員会が定める規則、犯罪捜査規範25条が、事件について報道機関に発表を行う権限を、「各県警察本部長、捜査本部長またはその指定する者」に与えているからです。
この一連の流れが刑事事件発生から翌日の朝刊が発行されるまでに行われます。
週刊誌を発行する出版社は記者クラブに加盟していないので、警察広報からの情報がもらえません。そのため、重要刑事事件で週刊誌が取材する場合は、まず全国紙記者に取材することもあります。

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報道のタイミング

刑事事件を起こしてしまった。報道されてしまうのでしょうか? 報道されるタイミングは?

報道されるタイミングとして最も可能性が高いのは逮捕の時です。
逮捕時に報道されない場合は通常、そのまま報道されない可能性が高いです。逮捕直後でなければ刑事事件としての鮮度は落ちてしまいますので、掲載がされにくくなるのです。しかし他に重要な事件がなく紙面を割くことができるような場合や、刑事事件の関係者にネームバリューがある場合には、例外的に逮捕直後でなくとも報道されることがあります。
逆に、逮捕時に重要刑事事件として報道されてもその後の事情により報道されない場合もあります。被疑者に精神疾患があることが分かった場合などです。
通常のニュースソースは警察発表です。しかし刑事事件について警察の広報担当から知らされる場合でなくとも、記者の知り合いが刑事事件関係者であったり、被害者がマスコミにリークしたりして、逮捕から時間が経ってからマスコミが刑事事件を把握することもあります。その場合に報道価値がある刑事事件であるとマスコミが判断すれば、タイミングに関係なく報道されることになります。

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報道の基準

どのような刑事事件が報道されるのでしょうか?

日本では、年間に約40万人程が逮捕され(平成21年度は429,678人)、12、3万人が逮捕及び勾留されています(平成21年度は129,728人)。
この全部が新聞、テレビの報道対象になるわけではなく、新聞では全国版に年間数千件、県版レベルではその何倍かの人々の身柄拘束情報が、実名入りで発表されています。
報道される刑事事件か否かは、他の事件や社会情勢との関連において、当該事件にどれほどの価値があるかにより、基本的には記者(県警キャップやデスク)によって判断されます。

報道されやすい刑事事件

社会に衝撃を与えたような刑事事件や、特異な手口による刑事事件など、社会の注目を集めそうなものは報道される可能性が高いです。
また、被疑者の属性が社会的に注目を集めそうである場合にも報道される可能性は高くなります。例えば、被疑者が芸能人や作家などの所謂有名人の場合、一流企業に勤めている場合や、警察官、公務員などの高い倫理観を期待される職業の場合、有名大学の学生などが起こした刑事事件の場合には報道される可能性が高いです。

報道されにくい刑事事件

精神障害者の起こした刑事事件については報道されにくい傾向にあるようです。
精神障害者については、心神喪失で「刑事責任能力」が全くないと判断され不起訴処分、無罪判決となる可能性がありますし、精神障害者や知的障害者による犯行と報道することで、障害者に対する偏見や差別を助長する恐れがあるからです。
記憶に新しいところでは、2001年4月30日に台東区の路上で、レッサーパンダの帽子をかぶった若い男が短大生を包丁で刺し、死亡させた事件については、世間に衝撃を与えた刑事事件であるにも拘わらず、報道が控えられました。事件直後には、レッサーパンダの帽子という装いの異様さに注目したマスコミ、特に週刊誌は、この事件を大々的に取り上げようとしましたが、被疑者が障害者であると判明した後は取上げることを自粛しました。

また刑事事件の内容では、性犯罪は報道されない傾向にあります。刑事事件の詳細(いつどこで何を)を明らかにすることで、被害者のプライバシーに関わる問題となるためです。

なお、突然の首相の辞任や、未曾有の災害の発生などによって、報道を予定していた事件が全てとんでしまうということもあります。新聞には紙面の紙幅、テレビには放送時間という制約があるからです。他の事件とのバランスにもよるということです。結果として選挙投票日の紙面は、通常の事件が非常に掲載されにくくなります。

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報道のルール

実名報道について

刑事事件において実名報道は違法なのでしょうか?
実名報道された被疑者が、報道機関に対して訴えたケースがあります。

<ケース1>

公正証書原本等不実記載などの容疑で逮捕・勾留されたがその後不起訴となった原告が、容疑の内容を実名報道されたことにつき、新聞各社に対し、実名報道をしたことそれ自体の責任を追及したケースにおいて、平成2年3月23日、東京地方裁判所は、違法ではないとして原告の主張を退けています。

<ケース2>

名古屋高判平成2年12月13日において、原告が業務上過失致死容疑で書類送検されたことにつき、新聞社が実名報道したケースで、実名報道したことそれ自体が違法であると主張したことに対し、犯罪主体となった者にとっては匿名又は仮名で報道されることが望ましいことは裁判所も認めるところであるものの、実名報道を違法なものとはいえないとして原告の主張を退けています。

冤罪事件で嫌疑をかけられた人はもちろんのこと、実際に刑事事件を起こしてしまった人であっても、実名報道によって事実上被る不利益は大きいため、何とかして実名報道を避けたいところです。
しかし、少なくとも現状では、実名報道をすることは違法ではないとされています。

ある刑事事件について犯罪の嫌疑をかけられ、警察からマスコミに事実が公表されたことで実名報道されましたが、後に嫌疑不十分ということで不起訴処分になりました。あたかも犯罪者のように報道されてしまったことは名誉毀損行為ではないでしょうか?

警察が敢えて嘘の事実をマスコミに公表したのであれば名誉毀損になります。しかし、結果的に事実でなかったにすぎないという場合にはどうなるのでしょうか。
裁判所の判断は、この場合、警察としてその公表時点までに通常行うべき捜査を尽くし、収集すべき証拠を収集した上で、公表当時に有罪と認められる嫌疑があったのならば名誉毀損にはならないとしています。(東京高判平成11年10月21日)

刑事事件で逮捕された被疑事実について、否認している(自分は犯罪をしていないと主張)にも拘わらず、自白している(自分は犯罪をしましたと認めた)として報道されてしまいました。どうやら警察の担当者が虚偽の広報をしたことによるようです。このような報道は許されるのでしょうか?

裁判所は、警察の広報担当者は「犯罪報道が被疑者やその親族等、捜査や公判に及ぼす種々の影響に鑑み、犯罪事実に関して正確に広報すべき職務上の義務を負う」として、虚偽の報道をされてしまった人に慰謝料を認めました。(神戸地判平成14年10月29日)

実名で報道する刑事事件と匿名で報道する刑事事件の峻別について、マスコミにルールはありますか?実名報道されることを避けたいのですが。

報道規制は自主規制

刑事事件で逮捕されても、起訴されても、裁判において有罪が確定するまでは本来無罪が推定されるはずです。しかし、実際には刑事事件で被疑者として逮捕されていることについて実名報道がなされてしまえば、近所から白い目で見られ、会社を首になるなど事実上不利益を被るのが現実です。
そうであるにもかかわらず、報道の自由は広く認められており、人権侵害や名誉毀損となる場合のように明確に違法行為が許されないのは当然のこととして、それ以外は自主規制でしかありません。

以下に某一般紙の掲載基準を紹介します。

少年報道について

少年事件については、少年法61条が実名報道を禁止している(参照:少年法61条「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」)ため、匿名報道が原則です。
刑事事件の被疑事実の発生時に未成年なら、送検、起訴、公判などの時点で成人に達していても続報は未成年と同じ扱いをします。
この規定があるために少年事件の報道に関しては神経質になります。ただし、罰則規定がないため、一部週刊誌などではセンセーショナルな見出しをつけて報道されてしまうことが度々あります。
また、少年事件の報道についても例外があり、新聞協会では、①犯人が逃走中で殺人、放火など凶悪な犯罪を再び引き起こす心配があるとき、②指名手配中の容疑者捜査に協力するとき、③少年保護より社会的利益の擁護が強く優先する特殊な場合には、氏名、写真の掲載を認め、これが新聞界の慣行になっているようです。

少年報道以外についての基準
原則実名

報道は実名が原則とされています。特に政治家、高級官僚、法曹・捜査関係者ら公的立場にある人物が、その職務にかかわる容疑で刑事事件の捜査対象となった場合は、実名扱いとされています。
逮捕時に実名報道であれば、原則としてその後も実名報道とされます。ただし、その後刑事事件の経緯によって匿名になることもあります。

匿名を選択できるケース

①精神障害者についての報道
精神障害者については、刑事事件の捜査段階や公判で、被疑者や被告人が心神喪失で「刑事責任能力」が全くないと判断されたとき(不起訴処分、無罪判決)、またはそう判断されることが確実なときは、本人を特定する名前、住所などは記載しません。判断に際しては、精神鑑定の結果など科学的・客観的データや捜査内容の取材結果を総合的に検討して結論を出します。精神科への入通院歴がある場合でも、それだけで匿名の理由とはせず、あくまで刑事責任能力の有無を基準とします。
ただし、薬物中毒者が精神障害を起こし、被疑者(被告人)となった場合は実名もありえます。
また、容疑がきわめて凶悪で、逃走していたり、実名手配されていたりして、新たな犯罪が予想されるときや、社会的利益の擁護が強く優先するときも、実名を検討します。
②別件逮捕についての報道
別件逮捕は、原則として匿名とし、本件逮捕に切り替わった時点で実名とします。ただし、別件逮捕の概念は法的に固まったものではないため、機械的な判断は避けるべきとされています。ただし、本件に直接つながる場合や別件自体が重い容疑の場合は、本件とのかかわりの記述に慎重な配慮を尽くした上で実名とすることもあります。
③任意捜査、書類送検についての報道
任意捜査、書類送検は、一般に匿名が妥当ですが、社会的責任の度合いによっては実名とします。刑事事件を匿名で報じた後、容疑者が属する官庁などが実名で処分を発表した場合は、その時点で実名に切り替えるか否かを判断します。
刑事事件の逮捕、起訴は実名が原則とされています。
④微罪処分についての報道
微罪事件については、報道する必要があり、実名を記載すると過度の制裁になる場合は、匿名も選択できるとされています。

他にも、報道関係者は社内ルールとして、刑事事件の被害者、周辺関係者、自殺者についての報道取り扱いルールも設けているようです。

上記基準は一般紙の例ですが、一般紙の中でも掲載基準は社によって異なり、日本経済新聞を除く全国紙4紙の中でも1紙だけは極めて緩く、次いで1紙が残りの2紙に比べてやや緩やかな基準で掲載しているといわれています。

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報道されてしまったら

報道されてしまったら

刑事事件で被疑者(被告人)として報道されてしまった場合、会社や学校から事情を聞かれ、解雇・退学処分が濃厚となる場合が多いでしょう。
特に示談をしていた場合には、刑事事件について罪を認めたと解釈されてしまうようです。

会社や学校からの事情聴取に対しては、冤罪であるとの一点張りで通しつつ、検察官の取調べに対しては自白して素直な供述態度で臨み、反省を示すことによって不起訴処分を狙う方もいるようです。刑事事件についての供述内容が一見矛盾しているようですが、通常検察官が取調べ状況について会社や学校へ情報開示することはありません。不起訴処分さえ取れれば、不起訴処分告知書を会社や学校に提出することによって解雇・退学処分を免れることは大いに考えられます。
しかし刑事事件の結末を見届ける前に処分を決めようとする会社・学校も多いので、必要なことは説明して、処分を待ってもらうように交渉する必要があるでしょう。

弁護士としては、積極的に嘘をつくことはできません。つまり、実際に刑事事件を起こしていることを知っていながら、会社や学校からの問い合わせに対して冤罪だと主張することはできません。しかし、会社や学校から、弁護士に対して問い合わせがあった際には、弁護士としては守秘義務がありますので、刑事事件の詳細や検事に対してどのような対応をしているかなどについて、依頼者の許可が無い限り、一切回答できません。結果的に会社や学校としては、実際に刑事事件を起こしたのか、それとも冤罪なのかの確証を得ることは困難になることもあります。

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